リポ酸は、ミトコンドリアに存在するピルビン酸脱水素酵素や2-オキソグルタル酸脱水素酵素などの4つの酵素の活性に必須な補酵素として働いている。それらの酵素は、いずれも呼吸代謝系において重要な機能を担っていることから、リポ酸は生体内において極めて重要な物質である。しかし、リポ酸が細胞内のどこで、どのように合成されアポタンパク質に転移するのかについては不明である。本研究では、植物におけるリポ酸の生合成およびタンパク質への転移に関与した酵素の構造と機能を解析し、リポ酸の生合成およびタンパク質への転移機構を明らかにする。 本年度は、アラビドプシスからリポ酸合成酵素およびリポ酸転移酵素のcDNAをクローニングし、それらの構造解析を行った。また、各酵素を大腸菌において過剰発現させ、それらのタンパク質を用いて各酵素に対する抗体を作製した。さらに、それらの抗体を用いて各酵素の器官、組織、細胞内局在性についての解析も行った。リポ酸合成酵素および転移酵素のcDNAは、各々374および235アミノ酸からなるタンパク質をコードしており、各タンパク質のアミノ末端側にはミトコンドリアへのトランジットペプチドと思われる配列が見い出された。これらの酵素をコードした遺伝子は、ゲノム上に1コピー存在し、おもに葉と花で発現していた。また、各酵素は細胞内ではミトコンドリアに局在し、リポ酸の合成および転移がミトコンドリアで起こることが明らかとなった。
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