リポ酸は、生体内において極めて重要な働きをもつ物質であるが、リポ酸が動植物体のどの器官のどのような組織で、また、細胞内のどこで、どのように合成され、どのようにアポタンパタ質に転移するのかについては殆ど不明である。本研究では、植物におけるリポ酸の生合成(リポ酸合成酵素)およびタンパタ質への転移に関与した酵素(リポ酸転移酵素)のcDNAをクローニングし、それらの構造と機能を解析した。これまでに、おもに以下の2つの点について成果を挙げることができた。 1、シロイヌナズナ(アラビドプシス)から大腸菌のリポ酸合成酵素およびリポ酸転移酵素をコードするcDNALIP1およびLIP2)をクローニングした。各cDNAは、大腸菌の各酵素の欠損株を相補することから、リポ酸合成酵素およびリポ酸転移酵素をコードすることが証明できた。また、各cDNAを大腸菌において過剰発現させ、発現したタンパク質を精製し、ウサギに免疫することにより抗体を作製した。シロイヌナズナの葉から細胞分画した画分について、各酵素に対する抗体を用いてウエスタン分析を行ったところ、両酵素がミトコンドリアに局在することが明らかになった。リポ酸転移酵素については、プラスチドに局在すると推定されるアイソフォームのcDNAもクローニングし、塩基配列を決定した。 2、シロイヌナズナのリポ酸結合性タンパタ質として、動物の場合と同様、ミトコンドリアに存在するグリシン脱水素酵素のHタンパク質、ピルビン酸脱水素酵素、α-ケトグルタル酸脱水素酵素および分岐鎖ケト酸脱水素酵素のE2サブユニットの4つを同定することができた。また、その他にプラスチドに存在するピルビン酸脱水素酵素のE2サブユニットをリポ酸結合性タンパタ質として同定した。
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