研究概要 |
光合成において水を分解し酸素を発生する光化学系IIは、これまでラン色細菌で完成されていると考えられてきた。しかし、最近、酸素発生系の表在性蛋白がラン色細菌、紅藻、高等植物で異なることが、筆者らにより明らかになった。33kDa蛋白は共通に存在するが、紅藻やラン色細菌には、高等植物に存在する23,17kDa蛋白はなく、その代りにチロクロームc550と12kDa蛋白が存在する。紅藻にはさらに20kDa蛋白が存在することが明らかになっている。従って、酸素発生系の進化の過程でc550と12kDa蛋白が23,17kDa蛋白に置き換わったことになる。また、その置き換わりの過程で20kDa蛋白が出現したと考えられる。そこで、本研究では表在性蛋白を指標とした酸素発生系の進化を解明することを目的とした。そのため、まず紅藻の表在性蛋白の抗体を作成し、どの進化の過程で12kDa蛋白やc550が23,17kDa蛋白に置き換わったか、どの段階で20kDa蛋白が出現し消失したか明らかにしようと試みた。抗体を作成するため、最初、紅藻の酸素発生標品から表在性蛋白を抽出精製しようとしたが、質の高い相当量の蛋白を精製することは困難であることが判明したので、これらの蛋白を大腸菌で大量発現させる系を確立することにした。その結果、12kDaと20kDa蛋白については、それらの遺伝子をクローニングし全塩基配列を決定するとともに、大腸菌による蛋白の大量発現にも成功した。また、これらの発現蛋白を抗原にして抗体を作成することにも成功している。c550については、クローニングには成功しているが、発現段階でヘムFeが挿入されず現在ヘムを入れるべく試行錯誤している。平成11年度は、これら抗体を用いて、これらの蛋白がどの進化の過程で出現し、そして消失していったか調べる予定である。
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