研究概要 |
昨年に引き続き,高等植物から藻類までの光合成器官,花弁や果実の非光合成器官について色素組成を分析し,特にネオキサンチンが9'-シス型か全トランス型かを分析した. Chl a/bをもつ高等植物,シダ,コケ,緑藻,ユーグレナなどの植物の葉緑体には9'-シス型ネオキサンチンのみ存在し,全トランス型は検出できなかった.Chl a/cをもつハプト,不等毛,渦鞭毛,クリプト,原核緑色植物門の藻類,Chl aのみをもつ紅色,灰色,藍色植物門の藻類からはネオキサンチンを検出できなかった.一方,非光合成器官では9'-シス型のみ,全トランス型のみ,両者存在,存在しないの4種類があった. 従って,葉緑体に存在するネオキサンチンは総て9'-シス型で,全トランス型は存在しないことを示している.ビオラキサンチンからネオキサンチンへの合成とシス異性化が同時に酵素によりなされていると考えられる.系統発生からはChl bの存在と,9'-シス型の存在が一致したが,偶然の一致か必然性があったかは不明である. 以上,当初の目的であった9'-シス・ネオキサンチンの藻類,植物における分布が明確になった.今後は機能面から何が9'-シス型だと有利で,何がトランス型だと不都合なのかを検討したい.またネオキサンチンは他の生体物質に見られないアレン構造をもつ.この構造は藻類の主要カロテノイドであるフコキサンチン,ペリジニンなどにもあるので,アレン構造の生合成経路の面からも検討したい.
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