形質転換植物を用いた耐塩性植物の創製

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10640641
• 研究機関: 名城大学
• 研究代表者: 高倍 昭洋 名城大学, 総合研究所, 教授 (80097766)
• 研究分担者: 日比野 隆 名城大学, 理工学部, 講師 (70218741) ; 田中 義人 名城大学, 理工学部, 講師 (10247679) ; 石川 浩 名城大学, 理工学部, 助教授 (40076592)
• キーワード: 塩ストレス / 光合成 / 環境耐性植物 / 環境応答 / 食糧問題

研究概要

地球上の陸地面積の多くは塩濃度が高く,植物の塩ストレスに対する適応と防御の機構を明らかにし,塩耐性な植物を創製することは,植物生理学的に重要な課題である。本プロジェクトでは、植物の塩ストレス防御に重要と思われる遺伝子を導入した形質転換植物を作製して、耐塩性を強化した作物を創製するとともに、植物の塩ストレス防御の分子機構を明らかにすることを目的として研究を進めた。
その結果、1. VibrioのNa^+/H^+Antiporterを淡水性ラン藻に導入したところ、ラン藻のLi+耐性能はついたが、Na+感受性になることが明らかになった。これらの結果は、論文として発表した。2. 酵母由来のマンガンスーパーオキシドデイスムターゼ(Mn-SOD)が、葉緑体にターゲットされるようにした形質転換イネは、塩ストレス耐性能が付与されることが明らかになった。これらの結果は、論文として発表した。3. 耐塩性ラン藻のDnaK蛋白質は、淡水性ラン藻のDnaK蛋白質と異なり、高濃度の塩でもフォールデイング活性を持っていることが明らかになった。これらの結果は、論文として発表した。4. カタラーぜ遺伝子およびベタイン合成遺伝子を導入した淡水性ラン藻の耐塩性、グルタミン合成酵素遺伝子を導入した形質転換イネの耐塩性、ベタイン合成遺伝子導入タバコの耐塩性についても検討した。これらの結果は、論文として投稿中あるいは投稿準備中である。

研究成果

• [文献書誌] Nomura/Hobino/Takabe/Sugiyama/Yokota/Miyake/Takabe: "Transgenically produced glycine betaine protects ribulose 1,5-bisphosphate carboxylase/oxygenase from inactivation in Synechococcus sp. PCC7972 under salt stress"Plant Cell Physiol.. 39. 425-432 (1998)
• [文献書誌] Kaku/Hibino/Tanaka/Takabe/Nakamura/Takabe: "Expression of nhaAv gene encoding Na+/H+ antiporter from Vibrio alginolyticus in a freshwater cyanobacterium Synechococcus sp. PCC 7942 confer lithium tolerance, but not sodium tolerance"Plant Cell Physiol.. 40. 557-564 (1999)
• [文献書誌] Tanaka/Hibino/Hayashi/Tanaka他: "Salt tolerance of transgenic rice overexpression yeast MnSOD"Plant Science. 148. 131-138 (1999)
• [文献書誌] Sugino/Hibino/Nii/Takabe/Takabe: "Overexpression of DnaK from a holotolerant cyanobacterium Aphanothece halophytica aquires resistance to salt stress in transgenic tobacco plants"Plant Science. 146. 81-88 (1999)
• [文献書誌] Wang/Meng/Ishikawa/Hibino/Tanaka/Nii/Takabe: "Photosynthetic adaptation to salt stress in three-color leaves of a C4 plant Amaranthus tricolor"Plant Cell Physiol.. 40. 668-674 (1999)
• [文献書誌] Hibino/Kaku/Yoshikawa/Takabe/Takabe: "Molecular characterization of DnaK from a holotolerant cyanobacterium Aphanothece halophytica for ATPase, protein folding, and copper binding under various salinity conditions"Plant Molecular Biology. 40. 409-418 (1999)
• [文献書誌] Takabe/Nakamura/Nomura/Hayashi他: "Stress Responses of Photosynthetic Organisms"Elsevier Science. 115-131 (1998)
• [文献書誌] 高倍/田中/日比野: "光がもたらす生命・地球共進化"弘文社. 202-208 (1999)