研究概要 |
色素体分裂狭窄部の微細構造の解析のため,ゼニゴケMarchantia polymorpha発芽胞子および緑藻類のミカヅキモとKlebsormidium flaccidumの細胞について急速凍結・凍結置換による固定を試みた.その結果,ゼニゴケとKlebsormidiumで液体ヘリウム温度の純銅ブロック圧着法によって良好な固定像が得られた.急速凍結・凍結置換法による切片の観察の結果,ゼニゴケ発芽胞子において高等植物におけると同様,色素体分裂狭窄部に二重分裂リングが認められた.Klebsormidiumでも詳細な観察を行った結果,二重の葉緑体分裂リングをもっていることが明らかになった.また,分裂途中のKlebsormidiumの葉緑体で分裂リングが閉環していないものが,連続切片の再構成によって見い出された.おそらく,分裂リングの形成が分裂部位の包膜の一箇所から始まり,環状に延長して最終的に閉環するのであろう.また,形成途中と思われる分裂リングにマイクロボディ様オルガネラが密着しており,その表面から繊維状構造の束が出て,分裂リングに合流していると見られる像が観察された.マイクロボディ様オルガネラが分裂リングの形成に何らかの役割を果たしていると考えられる.分裂狭窄部の微細構造を明らかにするために,凍結割断・レプリカ法を試みたが,残念ながらいまのところ良好な像が得られていない.この点については試料作成法等についてさらに検討する必要がある.急速凍結試料を用いて,抗アクチン抗体を用いた免疫電顕法によってアクチンが分裂リングに局在しているかどうかを調べたが,ネガティブな結果であった.また,ゼニゴケ発芽胞子にサイトカラシンを投与して葉緑体分裂を阻害するかどうかを調べたところ,アクチンが葉緑体分裂に直接関与しているという証拠は得られなかった.
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