以下の2つのアプローチで実験を行った。 1.抗ヒトCdc42抗体と交叉反応を示す植物タンパク質をコードする遺伝子の解析: Cdc42タンパク質は、動物や酵母細胞でアクチン細胞骨格系の制御に関わるRho型のsmall GTPaseである。本研究では、λgt11ファージを用いた発現ベクター上に構築されたトウモロコシのcDNAライブラリーから抗ヒトCDC42抗体と反応するクローンを免疫ブロット法により選抜し、挿入cDNA断片の塩基配列の決定を試みた。しかし、現状でヒトCdc42と相同性の高いアミノ酸配列を示す塩基配列は見いだされていない。 2.温度感受性細胞質表層微小管突然変異体の分離: 細胞質表層微小管は、植物細胞の形態形成に密接に関与するので、その異常変異植物は器官や細胞の形態に異常を生じる可能性が高い。そこで、一次選抜としてシロイヌナズナの芽生えを高温、低温、中温と温度を循環させる温度サイクル条件下で栽培し、形態異常を示す個体をスクリーニングした。ここで温度を循環させたのは、温度感受性の変異体のうち低温感受性と高温感受性の両方を検出可能とし、かつ、中温で正常な成長をサポートすることで変異個体の生存を促し、後代の種子採取を容易にするためである。変異体の親株であるColumbia株を用い温度条件を種々検討した結果、15℃→23℃→31℃→23℃(各ステップ1.5から3時間)の温度サイクルで野生株は良好に生育し、一方、EMSで変異を誘発したM2個体では形態異常やアルビノ等の変異形質を示す個体が高率で現れることがわかった。現在までに温度感受的に、矮性を示した株を4ライン、葉柄と節間が短い株とこれらが逆に長い株をそれぞれ1ライン、根が伸長しない株を2ライン、根毛の短い株を2ライン分離し、後代の種子を得ている。今後これらの株について蛍光抗体法等を用いて微小管に変異があるか確認する予定である。
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