細胞質表層微小管は、細胞壁へのセルロース繊維の沈着方向を制御し、それにより植物細胞の成長方向を規定している。したがって、細胞質表層微小管を制御する情報伝達機構を明らかにすることは植物細胞の形態形成を理解する上で極めて重要である。本研究課題代表者は、これまでに、酵母や動物細胞においてアクチン骨格系を制御することが知られている低分子量GTP結合タンパク質Cdc42に対する抗体を用い、この抗体と交叉反応を示すタンパク質がトウモロコシ等の植物細胞に存在し、微小管に局在するという知見を得ている。また、細胞質表層微小管の配列に異常を呈する温度感受性型突然変異体のシステマティックな分離に向け、EMSで化学的に突然変異を誘発したシロイヌナズナのM2種子種子ライブラリーの作製も行っている。本研究課題では、(1)抗Cdc42抗体と交叉するタンパク質をコードするcDNAをλ発現ライブラリーからクローニング、塩基配列の決定を行うとともに、(2)温度感受性突然変異体を効率よく得るための温度サイクル型スクリーニング法を検討し、細胞質表層微小管突然変異体分離の第一段スクリーニングを行った。これらの結果、(1)に関しては、cDNAにコードされるタンパク質として銅結合型オキシダーゼに相同性を示す推定分子量57kDaの新規のタンパク質が同定された。また、(2)に関しては、各ステップ180分または90分で15℃→23℃→31℃→23℃と温度を繰り返し変化させる温度サイクル条件により形態異常の変異体を容易に得る方法を確立し、微小管に変異が見られると期待される個体を複数得ることができた。今後、(1)で同定された銅結合型オキシダーゼ様タンパク質が微小管に存在するか否か蛍光抗体法などで確認するとともに、(2)のスクリーニングをもとに実際に微小管構造に異常のある変異体を取得してゆく予定である。
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