研究概要 |
担子菌ヒトヨタケの有性過程における形態形成は、交配型遺伝子AとBにより支配されている。B遺伝子は二核化のための核移動を,A遺伝子はクランプ結合を伴う二核の共役分裂を制御している。A,Bが互いに異なる一核菌糸の交配によりA,Bの経路が共に活性化されると,二核菌糸が形成され,二核菌糸は一定の環境条件下で子実体を形成する。これまでに,A遺伝子はホメオドメインをもつ転写因子をコードし,B遺伝子はフェロモンおよびフェロモン・リセプターをコードしていることがわかっている。しかし,A,Bの下流については不明である。本研究では,A,Bの下流で働く遺伝子を同定しその働きを解明することを目的として,以下1.〜3.の実験を行った。1.昨年度に引き続き,Aの経路が活性であっても二核菌糸を形成しなくなった突然変異体CM1(CLP1に改名)について解析し,原因遺伝子clp1が365個のアミノ酸残基からなる新規のタンパク質をコードしていることを明らかにした。また,clp1遺伝子の転写にはA経路の活性化が必要であることを明らかにした。さらに,clp1遺伝子を強制発現させると,A経路の活性化に関わりなくクランプ形成が誘導されることを示した。2.二核化のための核移動が阻止されるREMI突然変異体14株について遺伝分析し,14株のうち2株がREMIマーカーによりtaggingされているらしいことを示した。そこで,2株から原因遺伝子の一部を含むと考えられるDNA断片をmarker rescue法によりクローニングした。3.昨年度,子実体の光形態形成に異常を示すREMI突然変異体R1428の原因遺伝子dst1の一部を含むと考えられる5kb DNA断片を得た。そこで,5kb DNA領域を含む4個のコスミドクローンを同定し,それらのクローンによるR1428株の形質転換実験を行ったが,dst1-1変異は相補されなかった。
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