1. 自然界にいる二倍性オタマジャクシの尾部短縮(尾部アポトーシス)における活性酸素(ROS)の役割を明らかにするために、甲状腺ホルモン(T_3またはT_4)を含む培養液に入れて短縮を誘起したオタマジャクシの切断尾部片を用い、ROS関連酵素、DNA断片化、NO(一酸化窒素)生成などを調べた。その結果、尾部アポトーシスの分子機構として次のようなことが示唆された。甲状腺ホルモンによるNOS(NOシンターゼ)の誘発→NO濃度の増加→スーパーオキシド(O_2^-)の生成に伴うチトクロムオキシダーゼ阻害→カタラーゼ活性阻害による過酸化水素(H_2O_2)の蓄積→リソソーム膜およびミトコンドリア膜の脂質過酸化→リソソーム酵素およびアポトーシスプロテアーゼ活性化因子(Apaf)複合体の放出(甲状腺ホルモンはApaf複合体の放出にも影響を与える)→カスパーゼによるDNaseの活性化→DNA断片化→アポトーシス 尾部短縮の機構が二倍体とは本質的に異なると思われる半数性オタマジャクシに関する実験データは、現在蓄積中である。 2. 今後の研究の展開:我々はトランスジェニックガエル作製法を確立したので、オタマジャクシ尾部のROS関連酵素遺伝子を単離し、それらの機能解析を行う。例えば、カタラーゼ遺伝子を過剰発現させた場合、尾の生えたカエルができると予想される。 3. 寿命・老化に及ぼすROSの影響:この注目すべき研究はマウスを材料にして盛んに行われているが、両生類に関するものはほとんどない。両生類の場合、上記の幼生尾部短縮の分子機構から得られたデータは大いに役立つものと思われ、研究を開始している。
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