ヒドラのペダンクルの各部の小組織片の外植実験・移植実験の結果から、外胚葉上皮細胞はペダンクルの上部において分化の方向付けがなされ、下部において足盤細胞への決定を受けるが、足盤からの抑制によって分化自体は起こっていないという結論が示唆された。また、切り出されたペダンクルの上部は長期の培養によって頭部を再生するが、下部は切断後すぐに外胚葉上皮細胞がほとんど全て足盤細胞に分化してしまい長期の培養によっても頭部を再生することはなかった。また、ペダンクルの下部で足盤を切断した場合は、4時間後に足盤細胞の分化が始まり、24時間後にはほぼ正常な大きさの足盤を再生したが、ペダンクルの上部で足盤を切断した場合は、足盤細胞の分化の開始はこれよりも数時間遅れ、また、正常な大きさの足盤が再生されるには72時間以上の期間が必要であった。これらの結果は上記の結論を支持するものと考えられる。ここまでの結果は昨年の第8回International Workshop on Hydroid Developmentにおいて発表し、現在、論文にまとめて投稿中である。 また、ペダンクル下部の外植片の連結によって、足盤から放出される抑制的因子の存在は確かなものと考えられる。その因子の検出を足盤特異的に発現している遺伝子をDifferential Display of RT-PCR法によって単離することなどによって試みるているが、現在までに2つの足盤特異的に発現している遺伝子の候補のcDNAの断片をクローニングしている。今後これらの遺伝子のcDNAの全長をクローニングし、その機能解析をRNAiなどの手法によって試みる計画である。
|