研究概要 |
乾燥地に分布するヒキガエルは腹部皮膚の化学受容作用を利用して食塩水などの高張液を検出している。本研究計画では、この皮膚での化学受容器の存在を形態学的に明らかにしようとした。 1。皮膚の化学感受性:ヒキガエル腹部皮膚を化学刺激し、脊髄神経の電気的活動を記録した。ランタン塩(5mM,30sec)を皮膚に与えると、NaClとKClに対する脊髄神経応答は、ともに抑制され、昨年度調べたアミロライドの効果との違いが明らかになった。ランタンを沈着させ(電顕用の固定条件),その部位を電子顕微鏡で検索した。 2。蛍光色素による化学受容細胞の同定:蛍光色素diIを脊髄神経に投与し細胞を標識。DAB存在下での光化学反応によって電顕用サンプルを作った。電子顕微鏡観察により標識細胞の特徴を調べたが、上皮細胞であって特別に分化した構造は認められなかった。標識細胞の分布を定量的に調べた結果、これが刺激受容部位と考えた場合、神経の応答潜時と一致する。シナプスの探索にはまだ成功していない。電子顕微鏡による検索を継続する。 3。抗Na^+チャネル抗体によるチャネル分布の同定:Xenopus腎組織のアミロライド感受性Na^+チャネルのアミノ酸配列の最新の情報をもとに、これを抗原として抗体を作成した。この抗体は、ヒキガエル腹部皮膚の細胞層のうち、最外層の細胞(str.granulosum)と反応し、チャネルの存在を示した。
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