コオロギの気流感覚細胞は、感度を向上の進化のすえ熱雑音に出会っているが、熱雑音近くに閾値を設定して分子のブラウン運動への無意味な応答を避けつつ、なをかつ熱雑音のエネルギーと無相関性を利用して外部信号を多数の感覚細胞のパルス列の共通成分として抽出する、共分散コーディングを行っていることを明らかにしつつある。 先ず、気流感覚細胞の活動を細胞内記録し、気流への応答パルス列を調べた。刺激気流として、閾値以下の正弦波を与えても細胞はパルス列を発射しないが、閾値程度の白色ガウス雑音を共存させると不規則な欠落をともなうパルス列で応答する。そのパワースペクトルを求めると、パルス列に含まれる信号成分は共存させた雑音の大きさとともに高くなり、最大に達した後再び雑音に埋れるようになった。つまり気流感覚器は、雑音が無ければ検出できない閾値以下の微弱な信号を、外部雑音の助けを借りて検出できることを明らかにした。 ついで、2つの気流感覚細胞を同時に細胞内記録し、微弱な正弦波刺激に対するパルス発火時刻の揺らぎの相関を調べた。測定した11組の気流感覚細胞全てが無相関であった。つまり、微弱な正弦波刺激に対する発火時刻の揺らぎは、2つの細胞に共通な(実験装置や建物の振動など)外部の雑音ではなく、細胞内部の互いに独立な雑音に起因しており、その大きさは常温の熱雑音kT(【approximately equal】4×10^<-21>Joul)程度であることを明らかに これらの新知見は、San Diegoで開催された国際神経行動学会、東広島市での日本動物学会および東京での神経科学会ミニシンポジウムで発表し、英文国際誌への投稿準備作業中である。
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