クロレラを共生している単細胞生物ミドリゾウリムシは接合活性や集光性に概日リズムが見られる。この概日リズムの周期の長さや位相の決定に対して共生クロレラが主導的に影響を与えていることがわかった。この影響は明期でのみ見られることや光合成阻害剤などで消失することから、クロレラの光合成産物であるマルトースや酸素が主要な働きをしていることが考えられる。マルトースに関しては、マルトース分解酵素のグルコシダーゼの日周期的消長を測定しようとしたが、うまく行うことはできなかった。酸素の関しては、酸素を利用してエネルギー生産を行っているミトコンドリアの機能および形態が日周期リズムを発現しているか調べた。ミトコンドリアを蛍光色素で染め、その動態を観察した。その結果、ミトコンドリアは昼間核の周辺に来て、夜は細胞表面に移動する傾向が示すことがわかった。しかし、ミトコンドリアでのATP生産のリズムの確認や、ATP自身の機能に関しては今後の問題として残されている。 一方、ミドリゾウリムシは一度接合すると、その後一定分裂回数の間は接合することのできない未熟期という期間がある。この未熟期の長さが概日リズムの周期の長さとどのような関係があるのか、概日リズムの周期の長さの短い突然変異体を単離して調べた。その結果、周期の短い細胞は接合後の未熟期の長さも短いことがわかった。さらに、同じ細胞でクロレラを持っている緑色細胞とクロレラを含んでいない白色細胞での未熟期の長さを比べたところ、緑色細胞の方が短いことがわかった。緑色細胞と白色細胞では緑色細胞の方が概日リズムの周期は長くなるのに、なぜ未熟期の長さは短くなるのかは今後の課題として残された。
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