研究概要 |
無脊椎動物であるザリガニのハサミ筋には,静止長が10μm,伸びると14μmにおよぶ巨大サルコメアが存在する.そこには脊椎動物の弾性タンパク質「コネクチン」と同じサイズの300万タンパク質が存在し,弾性を担っている.なぜ300万という同じ分子量で,4倍もの長さのサルコメアを担うことができるのか,について明らかにしようとしている. 10年度決定した20kbのcDNA配列をもとに,3'と5'の両方向へのwalkingによりC末端を含む20kbを新たに決め,予想される全長の約1/2,C末端から40kbのcDNA配列を明らかにした.この配列のうち,2カ所の組換えタンパク質を抗原として抗体を作製し,蛍光抗体法で調べた結果,脊椎動物横紋筋と同様に,5'側がZ線側で,3'側がM線側であった.また,脊椎動物横紋筋では1カ所しかない,伸び縮みに関与しているPEVK elementが2カ所存在していた.これは今後のwalkingによりもっと増える可能性がある.さらに,何ともホモロジーがない,全く新しい68アミノ酸の繰り返し配列が存在したが,この部分の組換えタンパク質を作製してCDスペクトルを測定し,2次構造を予測したところ,ほぼβ構造であった. サルコメア内での伸長性を測定するため,各部位の抗体を現在作成中であるが,今のところ,PEVK elementが2カ所以上あることと,新しい68アミノ酸の繰り返し配列が存在することが,脊椎動物横紋筋の4倍もの長さのサルコメアを担うことができる要因ではないかと考えている.
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