昨年度、錐体型光受容細胞の指標としてビジニンを用い、この細胞と神経連絡している神経節細胞の特徴を示した。しかしながらこの細胞がアイオドプシン陽性の錐体型光受容細胞とどのような関係にあるのかは明らかではなかった。そこで両者について免疫2重標識を行った。その結果、両者は別々の細胞であることがわかった。本研究の初年度に明らかにしたようにアイオドプシン陽性細胞の多くは内分泌性細胞であった。つまりこれらのことはアイオドプシン陽性細胞以外に錐体型光受容細胞が存在することを示唆するものである。そこで、ビジニン陽性光受容細胞と桿体視物質であるロドプシンとの関係を免疫2重標識法によって確かめた。その結果、ロドプシン陽性反応を示すビジニン陽性細胞が見られた。今回見られたビジニン-ロドプシン陽性細胞はこれまで報告されていない松果体光受容細胞であることが示された。脊椎動物網膜において、ロドプシンと緑錐体視物質は非常に類似していること、神経連絡している神経節細胞が松果体周辺部であることとこれまでの電気生理学的研究とは考え会わせるとこの細胞は感色性神経節細胞の興奮性応答に関与している錐体型光受容細胞である可能性が考えられる。今後、この可能性については電気生理学的な研究により検証する予定である。また、今回見つかった松果体細胞の新しいタイプを含めると7種類の光受容細胞が松果体に存在することが明らかとなった。光受容蛋白についても4種類の存在が示唆されている。この検証に関しては現在遺伝子レベルでの解析を進めている。 今年度の研究目的の一つであった典型的光受容細胞、内分泌性光受容細胞、神経節細胞の3者の神経回路の三次元解析は、ビジニン陽性細胞が典型的光受容細胞であることが確認されたので、錐体型典型的光受容細胞、内分泌性光受容細胞、神経節細胞の三重標識を行い、立体構築に成功した。今後、電気生理学的研究と加えて、生理学的な解析も行う必要がある。
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