研究概要 |
今回の研究で新規血管退縮因子の大まかなタンパク質構造が判明した。まず精製された血管退縮因子1と2(VAP1、2)から限定分解によって数本の部分アミノ酸配列を決定し、その配列をもとにディジェネレイテッドプローブを作成した。これを用いてガラガラヘビ毒腺cDNAライブラリーを鋳型としてPCRを行い、数百塩基のDNAフラグメントを得た。さらにこれを用いてRACE法によりPCRを行ったところVAP2についてはタンパク質のほぼ全アミノ酸配列が判明した。またVAP1についても約60%のアミノ酸配列が判明した。この結果、VAP1,VAP2ともにメタロプロテアーゼ・ディスインテグリンファミリーに属するタンパク質であることが解った。またVAP1、2ともにメタロプロテアーゼドメイン、ディスインテグリンドメイン、システインリッチドメインの3つのドメインを持ち、それぞれ糖鎖付加配列を持っていた。VAP1(部分)とVAP2の2つのタンパク質問では約60%のホモロジーを持っていた。これらのことから血管細胞のアポトーシス誘導はこの様な特徴的な配列を持つ新規のタンパク質群に依ることがわかった。現在メタロプロテーゼファミリーでアポトーシス誘導をするタンパク質は知られていないことから、新しい作用をもつタンパク質であるといえる。現在このタンパク質の3つのドメインのうち直接細胞死(アポトーシス)を誘導するのはどのドメインなのか、またVAP1、VAP2の共通配列が細胞死誘導にどの様に関わっているかを検討中である。今後VAP1の残りの配列を決定すると共に、VAP1,VAP2のクローニングを行い、アミノ酸配列の改変によるアポトーシス誘導機構の解明に供する予定である。
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