研究概要 |
ほとんどの動物は行動を始めとして各種の生理機能に約24時間の周期性(概日リズム)を持っている。その背後にある振動機構(概日時計)は遺伝子発現を含む分子の連鎖反応系から成ると考えられている。本研究は、既に時計蛋白質候補として同定した31kDa蛋白質が、実際に時計の分子機構に含まれるものかどうかを明らかにしようとするものである。本年度はまず、転写の可逆的阻害剤(5,6-dichlorobenzimidazole riboside,DRB)を用いて蛋白質合成を転写レベルで阻害した時生ずる時計の位相変位を解析した.連続的阻害では10^<-4>〜5×10^<-4>Mの範囲で濃度に依存して周期の延長を示し、10^<-3>Mでは周期性が見られなくなり時計か停止した可能性がある.一方、6時間阻害では、処理時刻に応じた時計の位相変位が生じ、特に主観的夜の前半の処理で著しい時計の位相後退が生ずることがわかった.DRBによる位相反応曲線は、シクロヘキシミドによる翻訳阻害により得られる位相反応曲線にくらべて、やや位相か早い傾向が見られた.この結果は、時計の動きに転写が深く関わることを示しており、今後、転写と31kDa蛋白質の発現との関連を明らかにする予定である.これと平行して、31kDa蛋白質を単離精製する作業を進め、方法の改良により二次元電気泳動法により、クマシーブルーで染色できる程度の量を得ることができるようになった.今後精製した蛋白標品を用いて、アミノ酸配列の決定等へ作業を進める予定である.
|