現在までに申請者は、単細胞生物ブレファリスマ(Blepharisma japonicum)の光行動を起こす光センサーが、ロドプシンとは全く異なる分子であるキノン/200kDタンパク質複合体であることを明らかにした。本年度はキノン結合タンパク質の構造・機能解析に焦点を絞り以下の研究結果を得た。 1. キノン結合200kDタンパク質の一次構造推定のための遺伝子解析に向けて、タンパク質を完全精製しプロテアーゼ分解によるペプチド断片を得た。そして、この部分一次構造の決定を試み、不完全ではあるもののある程度の推定が可能となった。 2. キノン結合タンパク質のアミノ酸組成等の情報から、これがイノシトール3リン酸受容体(IP_3レセプター)に類似することを発見した。さらに、抗IP_3レセプター抗体を用いたイムノブロット解析、FITC蛍光抗体法により、キノン結合タンパク質がIP_3レセプター・ファミリーに属する可能性を得た。また、IP_3レセプターのよく保存された領域のアミノ酸配列をもとに、アンチセンス・オリゴヌクレオチドを合成し細胞内導入した。この結果、アンチセンス・オリゴヌクレオチドを導入した細胞では、キノン結合タンパク質量が減少するとともに光感受性が低下した。以上の結果より、キノン結合200kDタンパク質は光駆動型IP_3レセプターであるという結論に達しつつある。
|