本研究では、イスミ核から視蓋への投射様式を電流密度解析法によって調べることを目的とした。 イスミ核は中脳被蓋の後方に位置している。最初に、視策を刺激してフィールドポテンシャルを記録し、イスミ核の位置を確かめた。つぎに、刺激電極をイスミ核に刺し、電気刺激による視蓋のフィールドポテンシャルを深さ800μmまで20μmごとに記録した。各深さにおいて10回の応答を記録し加算平均をとった。応答はPCMデータレコーダに記録し、AD変換の後UNIXに転送し、CSD解析プログラムによってデプスプロファイルを作成した。刺激後最初に出現するのは、深さ320〜360μmで潜時約5ms、持続時間約5msのsinkである。このsinkは、イスミ核から視蓋への興奮性の入力がこの場所に局在していることを示している。続いて、深さ340〜440μm付近で潜時18msのsinkが出現した。このsinkは先に出現したものに比べて約35msという非常に長い持続時間を持っていた。また、最初のsinkに対するsourceは深さ160〜260μmおよび深さ460〜540μm付近で出現し、2番目のsinkに対するsourceは深さ140〜320μmおよび深さ520〜580μm付近で出現した。 以上の結果から、イスミ核から視蓋への興奮性入力はR3とR4の有随視神経線維投射部位と一致することがわかった。すなわち、網膜とイスミ核からの投射は視蓋ニューロンの同じ部位に結合していることが示唆される。また、sourceの分析より、イスミ核からの入力を受ける視蓋細胞の細胞体は第6層にあり、樹状突起を視蓋表面まで伸ばしていることがわかった。
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