日本列島産トミヨ属魚類は、イバラトミヨPungitius pungitius、トミヨP. sinensis、および、エゾトミヨP. tymensisの3種あるいは亜種に分類されてきた。しかし、アロザイムを用いた遺伝的解析により、イバラトミヨとトミヨは鱗板列の連続性にかかわりなく、お互いに生殖的に隔離された、淡水型、雄物型、および、汽水型の3遺伝集団からなることが明らかになっている。本研究では、エゾトミヨも含め4つの遺伝集団とアジア大陸極東域のトミヨ属魚類との類縁関係を解明するため、2年計画の初年度としてアロザイム解析を行った。さらに来年度計画しているmtDNAのRFLP解析に用いるプローブの作成を試みた。 アロザイム解析により23遺伝子座を検出することができた。これらの座の対立遺伝子頻度の解析から、これまで日本列島で確認された4遺伝的集団に加え、アジア大陸極東域には鱗板連続型のみから成る沿海州集団、および、鱗板連続型と不連続型の2型性を示すサハリン・オホーツク集団が分布していることが明らかになった。日本産およびサハリン産のエゾトミヨをout groupとすると、沿海州集団は日本産の雄物型、汽水型あるいは淡水型と遺伝的に比較的近縁であり、サハリン・オホーツク集団はこれらとは大きく遺伝的に分化していることが明らかになった。 北海道産のイバラトミヨの卵巣からmtDNAを常法によりクローニングする事ができた。これにより、来年度計画しているサザンハイブリダイゼーションによるmtDNA-RFLP解析のプローブを大量に得ることが可能となった。
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