1.フタリシズカとセンリョウにおいて、前年度行った訪花昆虫の行動の観察と捕獲、及び人為的授粉実験の補遺を行った。その結果、フタリシズカにおいてはアザミウマ類、甲虫類、ハナアブが訪れること、センリョウにはハナバチ類、ハナアブ類、甲虫類が訪れることが再確認された。また、両種とも自家和合性があること、フタリシズカは自動的自家受粉の能力をもつこと等のデータが補強された。 2.フタリシズカとセンリョウの子房壁に気孔状の小孔があって、そこから液状物質が出されることが判明した。子房がむき出しで直接観察が可能なセンリョウでは、多くの訪花昆虫がそれをなめていることが確認された。外部から子房を観察し難いフタリシズカにおいても、その物質を訪花昆虫が探索していることが示唆された。 3.キビヒトリシズカについては、観察・実験を予定していた生育地が破壊されており、代替の場所を捜す必要に追われたため、予定した実験・観察の全てを行うことはできなかったが、次のことを解明した。 (1)花は無花被であるが、雌蘂は雄蘂の基部によって保護される形態をとっている。花の形態的な変化の観察から、雌性先熟であるものの、その後雌雄同熟期に移行すると考えられる。 (2)訪花昆虫としてハナアブが捕獲されているが、ハナバチも訪花する可能性が高い。 (3)子房壁に液状物質が分泌されているように見える。
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