1.九州南部(宮崎県各地)および南西諸島(沖縄県渡嘉敷島)において採集調査を実施した。宮崎県ではおもに県の西部および南部の山地林、渡嘉敷島では島の中央部に残存する原生林など植生のよく保たれている林を選び、林内および林縁でクモ類を探し、土壌や生息状況の生態学的データをとるとともに、クモを掘り出して採集し、75パーセントのエチルアルコールで固定した。とくに渡嘉敷島にはオキナワキムラグモ属の固有種がおり、沖縄本島、久米島産の種との系統関係を解明する上で重要な標本を入手することができた。 2.現地調査によって得られた標本は、国立科学博物館の現有設備(電子顕微鏡を含む)を使用して、解剖、測定、撮影、描画などの作業を行ない、種を同定し、既知の種と比較検討の上、系統を解析した。同時に、同博物館が所蔵している日本および東アジア各国産の未整理標本についても、比較材料として同じ作業を進めた。 3.必要な情報を入手するために、北九州市立自然史博物館(福岡県)において研究打ち合わせを行なった。 4.研究結果の一部を小田原市で開催された日本土壌動物学会大会おいて「キムラグモ亜科(クモ目、ハラフシグモ科)のクモ類の分布と生息環境」の演題で口頭発表した。また、「キムラグモ亜科(クモ目、ハラフシグモ亜目、ハラフシグモ科)のクモ類の動物地理学的および分類学的知見」の標題で論文(英文)を作成し、国立科学博物館専報誌上に公表した。
|