ツリフネソウ属植物は全世界的に分布するが、中国西南部およびヒマラヤ地域で特に多様化したグループがあり、種数も多く、複雑な花型をもち、将来的には送粉者との共生進化の研究に発展し得る興味深い植物である。本年度に行った研究はツリフネソウ属の中でも特に中国・ヒマラヤ地域での多様性が高く、種の認識が困難と考えられるImpatiens drepanophoraとその近縁種について、中国雲南省産の種に重点をおき、種間の差異を明らかにし、類縁関係を推定し、地理的および垂直分布を明らかにし、モノグラフをまとめることを目的とした解析を前年度に引き続き行った。 具体的には、以下のとおりである。 1.中国・ヒマラヤ地域に産するImpatiens drepanophoraとその近縁種と推定される種について、描画装置および写真撮影装置つき双眼実体顕微鏡を用い、液浸標本および押し葉標本から、つぼみの段階から開花にいたる段階の花を解剖し、花部の各器官の形態を詳細に観察し、図化した。 2.観察した花部各器官の形態から、種の形態的な区別点を明らかにすることを目的として種内の変異性を調べ、さらに相互に比較を行い異同を明らかにした。 3.根端細胞を用いて、押しつぶし法により体細胞染色体の観察を光学顕微鏡を用いて行なった。 4.国内の研究機関を訪問して標本の検討を行い、また比較のため、日本産種の調査を行った。 5.形態的多様性および細胞遺伝学的多様性を考察し、種の認識を行った。
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