研究概要 |
本年度は、標記研究課題を達成するために立案した3年間の研究計画の1年目である。立案した研究計画に沿ってヒト、チンパンジー、アカゲザルの霊長類3種類のデータを収集している最中である。そこで、現在迄に収集されたデータを基にしてまとめた研究成果についてのみ報告する。 1つ目の研究は、米国立老化研究所との共同研究で、成熟期及び老化期にあるRhesus Monkey(アカゲザル)33個体の血液および血清の生化学的検査値に基づき、信頼性および妥当性のある老化の指標を検討した。更に食餌制限(普通食の30%)が老化過程にどのように影響を及ぼすかについて検討した。その結果、リンパ球(%)、血清のアルカリフォスファターゼ、アルブミン、クレアチン、カルシュムの5項目が老化の指標として選び出された。更にこれら5項目を基に老化の総合指数、いわゆる生物学的年齢の推定式を作成した。実験群(食餌制限)と非実験群の間の生物学的年齢の差は、統計的有意差を認めることが出来なかった。しかし食餌制限を行った実験群のMonkeysの老化の過程は非実験群のそれらよりも遅れる傾向を示した(Exp.Gerontol.Vo.33.1998)。 2つ目の研究は、ヒトを対象とした研究で、療育施設で共同生活する知的障害者、ダウン症患者および職員を対象に8年間縦断的測定を行ったデータを基に、健常者と身体・知的障害者の老化の程度を比較したものである。健常者の生理的諸機能の検査値で計算された生物学的年齢の推定式を用いて、11名のダウン症患者と4名の脳性マヒ患者の生物学的年齢を求め、健常者のそれらと比較検討した。その結果、1)ダウン症患者は部分的機能の老化現象を示すだけでなく、身体の全体の機能について老化現象を示すことが、2)生物学的年齢の加齢変化をもとに計算された老化率は、ダウン症患者のそれは健常者の約2倍であることが、明らかとなった(Mrch.Ageing Dev.Vol.105,1998)。
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