研究概要 |
本年度は3年間の研究期間中に得たデータを基に、主として次の2点、1.アカゲザルとヒトの老化機構の検討、2.ヒトの老化機構の検討、について研究した。(1)アカゲザルの形態および生理的諸機能の加齢変化を検討した結果、次の9項目、Hemoglobin(HGB),Lymphocytes(LYMPH),GOT,Alkaline phosphatase,Total protein,Albumin(ALBU),Albumin/Globulin,Calcium(CALC),and Dehydroepiandrosteronがアカゲザルの老化の指標に成りえた。(2)これら9項目の内、Hemoglobin,Lymphocytes,Albumin,Calciumの4項目はアカゲザルとヒトの間に共通する老化の生物学的指標(Biomarker of Aging)に成りうる。従ってこれらの項目を基に、アカゲザルとヒトに適用可能な生物学的年齢の推定式を作成することが可能である。(3)老化の程度の個人差はヒトよりもアカゲザルの方が少なく、いずれの項目においてもアカゲザルの老化率、いわゆる勾配はヒトよりも大であった。(4)アカゲザルの老化の指標としての生物学的年齢の推定式を求めたところBAS=-0.32HGB-0.023LYMPH-1.057ALBU-1.078CALC+19.3となった。(5)この生物学的年齢の推定式を人間に適用し122名の健常者の生物学的年齢求め、暦年齢に対する回帰式の勾配を計算しアカゲザルの勾配と比較したところ、アカゲザルの老化率はヒトと較べ3.46倍速いことが明らかとなった。(6)更に、アカゲザル約60匹を実験群(30匹)と非実験群(30匹)に分け、食餌制限(普通食の30%)が老化過程にどのように影響を及ぼすかについて検討した。実験群(食餌制限)と非実験群の間の生物学的年齢の差は、統計的有意差を認めることが出来なかった。しかし食餌制限を行った実験群のMonkeysの老化の過程は非実験群のそれらよりも遅れる傾向を示した。これらの研究成果は、2000.11.30-12.2、犬山市国際観光センターで行われたCOE Intemational Symposium "Development and Aging of Primates"で発表した。2.ヒトの老化機構の検討については、加齢に伴う動脈の硬化度を客観的に評価するため、大動脈脈波速度(PWV)の測定方法を工夫した。そしてPWVに影響する諸要因の貢献度を検討した。
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