研究課題/領域番号 |
10640693
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
土肥 直美 琉球大学, 医学部, 助教授 (30128053)
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研究分担者 |
泉水 奏 琉球大学, 医学部, 助手 (80216556)
瑞慶覧 朝盛 琉球大学, 医学部, 助手 (70136901)
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キーワード | 骨考古学 / 古人骨 / 沖縄 / 古病理学 / 風葬墓 |
研究概要 |
本年度は、まず、昨年度から継続している八重山地方の中・近世人骨について古病理学的調査を行い、興味深い知見を得た。平成11年3月の日本解剖学会全国学術集会において報告した内容は以下のとおりである。 南西諸島人骨格の形態学的研究の一環として、これまでほとんど知られていない生活面からの調査を行った。用いた資料は、石垣島蔵元跡遺跡(15〜16世紀)、登野城ナカヌハカ遺跡(15〜16世紀)、野底遺跡(18〜19世紀)、川平遺跡(18〜19世紀)などから出土した約23体の中・近世人骨である。これらは八重山地方の人骨としては、比較的まとまった資料であり、全身骨の観察が可能な好資料である。そこで、今回は、特に、ストレス・マーカーに焦点を絞り、観察を行った。その結果、頭蓋骨については、鉄欠乏性貧血と関連することが知られているクリブラ・オルビタリアが6例(20例中)に認められ、全体に緻密質の菲薄化、板間層の拡大など、貧血傾向を示す所見が多くみられた。また、ほとんどの個体にエナメル質減形成が認められた。四肢骨については、骨折痕と思われるものが2例、前腕と下腿の骨髄炎が少なくとも2例にみられたほか、多くの四肢骨に骨膜炎の痕跡が認められた。さらに、少なくとも4例に肘関節の変形性骨関節症がみられるなど、生活環境の厳しさを示唆する所見が多数認められた。これらは、中・近世における八重山地方の人たちの生活の一端を示す興味深い事例と思われる。 また、先史時代人の生活復元の試みとして、四肢骨形態の分析を行い、平成11年11月の日本人類学会において報告した。 現在、これらをまとめて報告書を作成しているところである。
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