手で物を巧みに扱う運動は、眼球と手の強調運動を伴う。そこで、物を見て行動を起こす時の視覚性探索行動について解析した。対象物が視界に現れたとき、それをはっきり見るためその像を中心視するような急速性眼球運動(サッカード)がおこる。このサッカードの反応時間は刺激方法により変化することが知られている。視覚誘導性サッカードの応答潜時は普通200msと報告されているが、もし固視点を消灯してその後200ms経って視標を点灯すると(gap200)平均反応時間100msのエクスプレスサッカードが出現する。しかし、その割合は被験者により異なり出ない場合もありほとんどが50%以下であった。なぜ、同じタスクによる定位反応にこのような差が出現するかを明らかにするのが本課題であった。そこで刺激方法のみならず、反応に対する準備状態が反応時間に影響することを検証するため、今回は、被験者自身の準備が整ったときに自己ペースで手でキイを押し、その後いろいろな時間間隔をおき刺激を提示するタスクを行った。その結果、エクスプレスサッカードの出現頻度はgap100で平均20%上昇した。しかも、固視点を消灯しなくても、さらに、固視点がなくとも、キイ押し後100-200msに視標が点灯することにより、エクスプレスサッカードの出現が全被験者(7名)でみられた。ことことは、手でキイを押すという体性感覚、運動準備、さらに固視点消灯がそれぞれにサッカード反応時間の短縮に関与していることが明らかになった。
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