本年度はまず単一周波数の正弦波電場を入力として用いた、以下に述べるような周波数域非線形電気光学スペクトル測定システムの開発を行った。 直交する2枚の偏光子の間に挟まれ、波形発生器からの高純度正弦波電場を印加した液晶試料に高安定のHe-Neレーザからの単色光を入射する。試料からの透過光はPINフォトダイオードを用いて作成した光センサで電気信号に変換されたのち、広帯域(1mHz〜100kHz)・高分解能(16ビット)のFFTアナライザの一方のチャンネルに入力される。得られた時系列信号はアナライザ上で平均加算された後、周波数スペクトルに分解され、基本波成分および高周波成分の検出が行われる。このとき、同時に入力信号をアナライザに他方のチャンネルに入力し、出力信号との位相差を測定して複素透過光強度を得ることができる。さらに入力する正弦波電場の周波数および振幅を変えて測定を行うことにより複素非線形電気光学緩和スペクトルが得られる。また、液晶の異方性に関する情報を得るために、偏光子とスメクティック層の法線とのなす角度を変化させてスペクトルの測定が行えるようにした。 本年度はさらに開発されたシステムを用いて、ガラスセルに封入された強誘電性液晶のSmC^*相および反強誘電性液晶のSmC<*【chemical formula】>相における非線形電気光学スペクトルの測定を行った。SmC^*相においては強誘電的ゴールドストンモードに対応した線形、2次および3次非線形緩和スペクトルが得られた。得られた緩和スペクトルの概形はいずれも現象論より計算される理論スペクトルとよい一致を見せた。一方、SmC<*【chemical formula】>相においては対称性から2次非線形スペクトルには反強誘電的ゴールドストンモードに対応した緩和が見られたが、線形スペクトルには対応した緩和は見られなかった。
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