研究概要 |
レーザアブレーションにより作製されたコバルトがどのような構造を取るか確認するために,コバルト薄膜をレーザアブレーションおよびマグネトロンスパッタリング法により成膜し,X線回折によって構造の違いを確認した. スパッタリング法によって成膜されたコバルト薄膜はfcc構造を取っており,(111)方向に優先的に配向していた.一方,レーザアブレーションにより成膜されたコバルト薄膜はX線回折の結果hcp(1000)およびfcc(111)に配向した多結晶構造を取っていることが判明した.磁気記録媒体としてコバルト超微粒子を利用するためには磁気異方性の大きなhcp構造を有することが必要であることから,コバルト超微粒子の作製にはレーザアブレーションの利用が有効であることが示された. さらに,コバルト超微粒子内包カーボンナノカプセルを作製する前に,基礎的なデータを取得するため,コバルト原子の基板に対する入射角を変化させコバルト薄膜を成膜したところ,入射角を変化することによってhcpコバルトの配同性を制御することができた. 以上の結果をもとにコバルト超微粒子内包カーボンナノカプセルの合成を行った.ターゲットにはコバルトターゲットの上にカーボンターゲットを重ねた複合ターゲットを用いた.まず,3×10-4Pa以下に排気した真空状態での合成を試みた.試料の構造解析の結果,hcpコバルトとfccコバルトがほぼ同程度存在する多結晶膜になっていることがわかった.また,保磁力もコバルト単体の時と比べ低下していた.つぎに真空状態からHeガスを導入し合成を行ったが,hcpコバルト超微粒子を得ることができなかった. コバルト単体での実験ではhcp構造が得られており,レーザアブレーションされたコバルトはhcp構造を取りやすいと考えられる.合成条件(導入ガス種,ガス圧,合成時の基板温度等)を最適化することにより,hcp構造を有するコバルト超微粒子の作製が可能であると思われる.
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