研究概要 |
レーザアブレーションで成膜したCoがスパッタリング法で成膜したCoよりhcp構造を取りやすいという結果がCo単体の成膜および構造解析で判明したため,レーザアブレーション法によりCo-C薄膜を成膜し,その磁気特性を調べた.用いたターゲットは(1)Coターゲット上にカーボンチップを配置した複合ターゲット.(2)Co,Cそれぞれ独立したターゲットである. 回転させた(1)のターゲットをアブレーションすることで得られたCo-C薄膜はC母相中にCo微粒子が分散しているグラニュラー薄膜となっていると考えられる.このとき,X線回折による構造解析からfcc構造のCo微粒子が多く,hcp構造のCo微粒子は少ないことがわかった.また,保磁力も約300Oeの値が得られた.しかし,X線回折の結果から見積もられた粒子サイズは26nmであり,磁気記録媒体としては粒子サイズが大きすぎる.そこで,(2)の構造のターゲットを用い,かつハーフミラーを用いて2つのターゲットに同時にレーザアブレーションを行い,粒子サイズの微細化をはかった.しかし,この方法ではCoの組成制御が難しく,体積あたりの磁化が非常に小さく,かつ,保磁力も小さい値しか得ることができなかった.そこで,Co-C薄膜の組成および構造をより正確に制御し,均質なグラニュラー薄膜を作製するために,(2)のターゲットを用い,レーザ側にシャッタを設けることでCo,Cターゲットを交互にアブレーションし,多層膜を成膜し,それを熱処理することで粒子サイズを制御したグラニュラー膜の成膜を試みた.Co層厚を2nmとしたサンプルでは,磁化も非常に小さく,理想的な多層膜とはならず非常に小さな粒子状に成長していることが考えられる.その後熱処理したサンプルは大きな磁化が得られていたが,X線回折からは結晶構造に起因したピークが現れていないことから,粒子状のCoがas-dep時よりは大きく成長している可能性があることがわかった.さらにCo層を4nmとしたサンプルでも同様の結果が得られており,積層構造とならずに粒子状にCoが成長していることが考えられる. 以上の結果から,多層膜を熱処理することで構造および組成を制御したグラニュラー薄膜の成膜が可能であることが理解された.
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