研究概要 |
II-VI族系青色半導体レーザーの寿命・劣化機構 --ミクロ欠陥増殖による劣化-- ZnSe系II-VI族青色半導体LD素子の重要な課題は素子寿命・劣化の問題を克服することである、本研究は素子中の転位・積層欠陥等のマクロ欠陥を除去した高品質LD素子が示す遅いモードの劣化(最終段階のミクロ欠陥による増殖:100-400時間オーダ)のメカニズムを検討し、ミクロ欠陥増殖効果が劣化の主要因であることを解明した: 実験手法:実験試料はZnSe-ZnCdSe単一量子井戸を活性層、ZnMgSSe層を光閉じこめ層とするSCH構造青緑色LED及びLD素子を使用。実際のLD素子動作条件におけるミクロ欠陥(準位)増殖は過渡容量分光手法(DLTS,ICTS,TSCAP法)を併用して検出した。また欠陥の電気的活性度(欠陥の非発光再結合特性)は新しく開発したDouble-Carrier-Puse DLTS実験(欠陥による電子・正孔非発光再結合の検証)により進めた。 劣化メカニズム: (i)素子中にマクロ欠陥を含むLD素子の劣化機構:マクロ欠陥はLDの動作条件では通電電流により単独で増殖し急速な素子劣化(数時間)を誘発する(この条件ではミクロ欠陥増殖は生じない)(ii)マクロ欠陥がないLD素子の劣化機構:非常にゆっくりとした劣化(100時間以上の動作寿命)が進行する:このslow-modeの劣化の主要因はp型ZnMgSSeクラッド層中のミクロ欠陥準位(H0-H1欠陥)の増殖に起因している.(iii)ミクロ欠陥濃度は100時間動作後では初期濃度(10^<14>cm^<-3>台)の数百倍となリキャリア補償領域に達してくる。 [素子寿命との関係及び制御手法]ミクロ欠陥増殖が最終的な素子寿命を制限する形態として(a)ミクロ欠陥単独による素子絶縁化,(b)マクロ欠陥への構造遷移の二つの可能性がある。この劣化機構から、寿命改善には、ミクロ欠陥の起源となる結晶中の不活性窒素(N^*)の活性化(アクセプタ化)が有効な手法と判定した。
|