研究概要 |
本研究では、太陽電池用半導体であるCuInSe2の精密組成制御による真性欠陥制御、価電子制御を目的としたCuInSe2の有機金属分子線エピタキシャル(MOMBE)成長技術の開発を行った。まず、研究代表者によりCuGaSe2,CuAlSe2でMOMBEに成功している、シクロベンタジエニル銅トリエチルフォスフィン(CpCuTEP)とトリエチルインジウム(TEI)有機原料を差圧供給する方法でGaAs基板上にCuInSe2の成長を試みた。その結果、CuInSe2のエピタキシャル成長に成功し、X線回析、SEM、フォトルミネッセンス、フォトリフレクタンス、ラマン散乱評価より、MOMBEで高品質のCuInSe2が成長できることがわかった。次いで、CuとIn有機金属原料の精密供給を目的とし、新しい銅原料(フロロヘクサアセチルアセトネート銅・アリルトリメチルシラン:hfa-Cu-atms)と精密マスフローコントローラ(MFC)を用いた流量制御による精密組成制御の可能性を検討した。この為に、新たに有機金属導入用装置の製作を行った。この装置は、蒸気圧が低いhfa-Cu-atmsとTEIを安定に供給するために恒温層内部に原料容器、MFC、空圧作動バルブを組み込み、原料ガスの凝縮を防いでいる。まず、有機原料をキャリアガス無しで直接導入、Cu膜の成長を試みた。この結果、hfa-Cu-atmsの容器を減圧するために、常温でも原料がhfa-Cuと溶媒であるatmsに分離し、蒸気圧の高いatmsのみが供給されることがわかった。そこで容器の圧力をなるべく高くして原料を供給するために、配管を大幅に変更してヘリウムガスによるhfa-Cu-atmsのバブリングによる導入、シリコン基板上でのCu膜の成長を試みた。しかし、Cuの安定した導入に至っておらず、四重極子質量分析計を用いたガス分析による原料ガスの分解過程を調査した。
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