MOSFETのゲート電極材料としての利用が検討されているCoSi_2に着目し、イオン照射がシリサイド層の抵抗をどのような形で増加させるかを解明するために、照射条件と損傷の程度との関係を調べ、CoSi_2層中での損傷形成過程を明らかにした。 まず、イオン照射による損傷形成が、どのような照射条件で顕在化するかを解明するため、CoSi_2層における損傷形成の照射条件依存性を調べた。照射には、25keVのアルゴンイオン連続ビームを用い、CoSi_2層は膜厚25nmのものを使用した。シート抵抗は、イオン照射により増加し、その増加量はドーズレートが7.5X10^<11>cm^<-2>s^<-1>より高くなると急激に大きくなった。これより、照射により形成されるカスケード領域が重なり始める特性ドーズレートが7.5X10^<11>cm^<-2>s^<-1>程度であることがわかる。 照射により形成されるカスケード領域の緩和時間を見積もるために、パルス化イオン照射を行った。その結果、室温の照射温度において、パルスオフ時間が200μs以上で、シート抵抗の増加量は一定となった。これは、パルスオフ時間が200μs以上では、パルス間をまたいでのカスケード領域の重なり合いがなくなるためと考えられ、カスケード領域の緩和時間τが200μs以下であることがわかった。
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