研究概要 |
薄膜成長等の低温化は,将来のナノスケール半導体デバイス作製にとって不可欠であるので,重要な研究課題である。真空紫外領域に高い輝度を有するシンクロトロン放射光の薄膜成長等への応用は,従来光源では不可能であった反応物分子の内殻電子励起をも利用でき,エピタキシャル成長や独特なガスドーピングが非加熱プロセスとして生み出されるので,次世代の半導体分野での利用が期待される。これまで,私達の研究グループは,GaAs基板上へのZnTeの室温エピタキシャル成長や室温原子層成長などをシンクロトロン放射光を用いて実現できることを世界に先駆けて実証することによりその有用性を示してきた。そこで,本課題では,この研究を発展させ,物性制御の可能性を検討することを主たる目的とした。光源は分子科学研究所の極端紫外光施設を利用し、原料ガス供給時の成長室圧力を10^<-5>Torr程度として、基板温度室温〜100℃の範囲で有機金属原料を用いた成長実験を行った。本課題ではホモエピタキシャル成長に注目し、ZnTe単結晶板をブリッジマン法により作製し、この上に有機金属化学気相成長法によりアンドープ高抵抗率ZnTeエピタキシャル層を成長させ,シンクロトロン放射光による薄膜成長のための基板の供給をはかり、シンクロトロン放射光によるZnTの薄膜形成を実施した。今回、成長過程にまでさかのぼって物性制御の可能性を追及するため、基本的な成長特性(各種成長条件に対する成長速度,RHEEDによる表面状態,結晶性の依存性)や成長条件と結晶品質(主としてフォトルミネッセンス特性)との関係などを詳細に明らかにした。マシンタイム期間中に光源自体のトラブルにより、ドーピング実験はできなかったが、アンドープ状態の結晶品質や成長過程に関して幾つかの知見を得た。
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