研究概要 |
金属,あるいは金属窒化物と軟質材料であるポリテトラフルオルエチレン(以下PTFEと略す)を多層化し,PTFE層厚みが多層薄膜の硬さおよび超微小押し込み硬さ測定時のエネルギー散逸に与える影響を検討した. TiN/PTFE多層構造薄膜においては,PTFE層の厚みを〜7nmまで薄くしていくことにより,超微小押し込み硬さ試験により測定される動的硬さが大きくなった.また,このとき,超微小押し込み硬さ試験中に散逸されるエネルギーは小さくなり,逆に弾性的エネルギーとして膜内に一旦蓄えられるエネルギーは大きくなった.これは,薄いPTFEを挟むことにより多層構造化された薄膜が塑性変形しにくくなると同時に弾性率が向上することを示す. TiN/PTFE,Al/PTFEおよびTi/PTFE多層構造を比較すると,それぞれ周期長さを〜5nmまで小さくするとともに硬さが向上し,また,膜が弾性的になるという傾向は同じであった.しかし,その硬さおよび弾性率の変化の割合はTiN/PTFE,Ti/PTFE,そしてAl/PTFEの順になった.我々は,この差は多層薄膜を形成した材料の表面自由エネルギーの差により多層構造薄膜内に発生する界面自由エネルギーの大きさの違いに起因するのではないかと考察している. 多層薄膜への超微小硬さ試験において,エネルギー的考察をおこなうことにより多層構造化による薄膜の硬さ向上,弾性化についての新規な知見を得ることができた.
|