研究概要 |
1.高減衰カンチレバーの試作設計 力制御系を安定させるために減衰係数の大きなすなわちQ値の小さなカンチレバーの最適化設計を行った。その結果、市販の窒化シリコン製の矩形カンチレバーとほぼ同一のサイズで、等しいバネ定数と共振周波数を持ちながらQ値は1/20というカンチレバーが制作可能であることがわかった。今後は引き続き探針を一体で形成することを検討する。 2.Ti-6Al-4V基板上へのハイドロキシアパタイト薄膜形成 生体適合材料であるTi-6Al-4V基板上にさらに生体親和性の高いハイドロキシアパタイト薄膜を形成した。薄膜と基板の固着度と基板表面粗さとの相関を調べるために、Ti-6Al-4V基板の表面粗さを3段階(R_<max>=3.0,1.0,0.1μm)に高精度に研磨した基板を作成し、レーザーアブレーション法により薄膜形成を行った。薄膜と基板の固着度をスクラッチ試験と引張り試験で評価した。その結果、固着力は基板の表面粗さにほぼ比例して増大することが明らかになった。表面粗さR_<max>=3.0μmの基板の固着力は10MPa以上と推定され、実用強度に達していることがわかった。 3.細胞培養の結果 ハイドロキシアパタイト薄膜の生体親和性を評価するため、また表面粗さの違う基板に成膜したとき生体親和性にどのような影響があるのかを評価するための予備実験を行なった。実験はin-vitroで、ウサギ(生後一週間)の足の腸骨から採取した初代骨芽細胞組織と、ウサギ(胎児)から採取した初代線維芽細胞を用いて行なった。培養5日目のデータから比較した結果、基板の表面粗さがR_<max>=0.1μmのものが最も細胞数の増殖が著しく薄膜の剥離強度の結果とは必ずしも相容れないことが明らかになった。また、固着力の定量的な評価を原子間力顕微鏡で行うには至らなかったことから、今後さらに実験方法を検討する必要がある。
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