研究概要 |
力制御型AFMの安定性向上を目指してポリイミド製のカンチレバーの実現可能性について検討した。システムの安定性は主に共振のQ値が小さく、共振周波数の低いカンチレバーによって改善される。我々はポリイミド製のカンチレバーを試作し、その機械的特性特に真空中におけるQ値を測定した。これから得られた値を用いて力制御系に要求される周波数帯域を見積もった。その結果ポリイミドのカンチレバーは内部減衰以外が全く等しい窒化シリコン製のカンチレバーと比較して要求される周波数帯域を1/20に低減することができる事がわかった。系の安定性は数値シミュレーションで検証した。計算から周波数帯域が不足した場合、フォースカーブが激しく振動することがわかった。試料としてはハイドロキシアパタイト(HAp)を成膜したTi-6Al-4Vの基板上に培養した骨芽細胞を用いる。生体適合性を向上させるために表面粗さ0.1〜3.0μmR_<max>に鏡面研磨したTi-6Al-4V基板上にHApの薄膜をエキシマレーザによるレーザアブレーションによって成膜した。チャンバー内の圧力13.3Pa、基板温度は500℃から560℃であった。生成した薄膜の結晶性はXRDによって評価した。その結果、基板温度が500℃を下回るとアモルファスが生成し、560℃を越えるとHApとトリカルシウムホスフェイトが混在するようになった。薄膜表面の形状は通常のコンタクトモードのAFMで観察した。薄膜の機械的特性はスクラッチ試験と引張り試験器による引き剥がし試験で評価した。以上の結果、次のような知見を得た:(1)結晶化したHApは約530℃で得られた、(2)スクラッチ試験においてHAp薄膜は18Nの荷重で明白に剥離した(3)引き剥がし試験では、基板の表面粗さが各0.1,1.0,3.0μmR_<max>,で引き剥がし強度がそれぞれ2.3,5.4,10MPaであった。(4)HAp薄膜の生体適合性をin-vitroで評価した。残念ながら、システムの不安定を解消すべく努力したが、この試料を力平衡型AFMで観察するには至らなかった。本システムにはさらなる改良が必要である。
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