研究は、両眼立体視の実験、奥行運動の実験、輝度変化検出の実験の3つにわかれるが、それぞれについて、実験プログラムを作成し基礎的な心理物理実験を行った。それらより以下の事柄が明らかとなった。両眼立体視の実験では、刺激の形状としてランダムドットパターン、ガボールパターンの2種類について感度測定を比較した結果、両刺激形状の間で実験結果は類似していて、奥行き感度は主に空間周波数で決定されることが明らかとなった。さらに、複数の周波数が混在する刺激でも、それに対する感度は主に感度が高い周波数成分のコントラストで決定されることが明らかにされた。これらは、両眼立体視に対しては、刺激形状そのものよりも空間周波数が、重要であることが示唆される。奥行き運動の実験では、両眼視差の時間変化のみで奥行き運動が知覚されるとの従来から知られている事実に加えて、両眼視差がなくても両眼網膜像の速度差があれば奥行き運動の知覚が可能であることが明らかにされた。さらに、この速度差に感度を持つメカニズムは、短い定時時間でも感度が高く、速い速度に感度を持つことを示す結果が得られた。この点については、今後両眼立体視の時間特性に含めて検討していく予定である。輝度変化検出については、刺激の輝度レベルを変化して、コントラスト感度の時空間周波数特性の測定を行った。従来からしられる輝度レベルによる感度の変化することを確認するとともに、色変調刺激でも輝度レベルの変化にともなう、感度の変化を確認した。これは両眼立体視においても輝度レベルによる感度変化の検討を加える必要性を意味する。今後は、奥行き運動も含めた両眼立体視の時間特性の評価、さらに両眼立体視機能のモデル化に向けて研究を進める予定である。
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