1)InP系材料面型光変調器の試作 光変調画素を100程度集積化したGaAS系材料の面型アレー光変調器(7.5Vの電圧変化で消光比:10dB)については平成10年度に試作したので、本年度は光通信で利用されている長波長帯で動作する面型変調画素をInP系材料で試作することにした。InGaAs結晶の多層膜成長、埋め込み成長技術、導電性透明膜を用いた電気配線パターンの試作など面型変調器の集積化へ向けて成長技術やプロセス技術の確立に重点をおき研究を行った。現在までのところ、InP結晶を用いた埋め込み再成長時にInGaAs多層膜を溶かしてしまうメルトバック現象が問題となり素子の試作までには至らなかった。InGaAsP材料による埋め込み再成長技術の確立が今後の課題となった。 2)InGaAs/InP多重量子閉込構造を利用した素子設計 より低い駆動電圧で、高い消光比、低い挿入損を実現するため、InGaAs/InP多重量子井戸(MQW)構造を利用した透過型でかつ面型の光変調器の設計を行った。素子構造としては、p:i-MQW:n基本構造をM段積み重ねた多層膜にp型とn型からなる櫛型形状の導電層を利用してi-MQWに横方向から電圧を加える構造を仮定した。高性能化には、MQW中の不純物濃度を1x10^<15>cm^<-3>以下にすること、井戸厚の揺らぎの標準偏差値を0.2nm以下にすることが重要であることがわかった。最適化したInGaAs/InP:MQWではバルク結晶の2倍消光比を大きくでき、10Vの電圧変化で消光比10dB、挿入損2dB、動作速度数GHzの性能を有する素子構造が設計できた。
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