光の放射圧を利用してミクロンオーダーの微粒子を操作する研究はここ数年、生物試料への応用を中心に盛んに行われている。この研究は微粒子を半導体レーザで捕捉すると同時に、粒子からの散乱光による帰還効果を利用して、粒子の変位を高精度で計測し、運動特性から粒子の特徴抽出、認識を行う方法を開発することを目的としている。 これまでの研究では、まず半導体レーザの光帰還効果を用いて変位を検出する方法を微粒子の変位計測に応用できることを明らかにした。また、トラップされた状態の粒子の微小な運動から、レーザと粒子との結合の強さがわかることから、液体中の粒子を非浸襲で操作、認識、計数できる可能性を示した。さらに、レーザの波長を注入電流により変化させる方法と、レーザと微粒子の間の距離を圧電素子によりシフトさせる方法を用いて、半導体レーザと粒子で構成する外部共振器の共振状態を変位計測に応用することを試みた。二つの変調法において、温度安定化によって、半導体レーザの周波数変動を5MHz以下にすることにより、60分の1波長の変位計測精度があることがわかった。特に距離をシフトさせる方法では、レーザから粒子までの距離を短くて済むので、光学系の安定性に優れている。 今年度の研究によって、半導体レーザ電流変調法および位置シフト法について位相計測の原理を確かめることができ、半導体レーザの強度変調による粒子の駆動により、変位に対するトラップ力を表すばね常数を測定した。これからは、外部変調法との組み合わせにより、微粒子の認識への応用を実現していく予定である。
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