動的相関関数や線形応答関数の計算アルゴリズムの開発は理工学全般、特に工学基礎において極めて重要なものである。本研究の目標は、大規模行列で記述される系に対して動的相関関数を計算するための高速アルゴリズムの確立とその汎用化、最終的にはパッケージ化をはかることにある。またこのアルゴリズムを、実行列のみならず複素行列で記述される系の場合も扱えるようにする。実行列に対してのアルゴリズムは、部分的に開発ずみであったが、本年度はこれを非対称実行列に対して適用できるように一般化をはかった。右ベクトルと左ベクトルに対応した固有値問題を運動方程式にマッピングした式に時間・空間の周期的外力を加え、その方程式が記述する系の時間発展を計算するアルゴリズムを作った。様々な行列の次数・型に対してテスト計算を行い、計算精度、計算時間、ベクトル化率、並列化等を調べた。以上は主に設備備品として購入したユニックス・ワークステーションを用いて行われた。ベクトル化・並列処理のためのチューニングは、スーパー・コンピュータおよびパラレル・コンピュータを用いて行った。この方法を具体的な物性物理学の問題に適用した。そして量子力学の相関関数のいわゆる久保公式を計算するアルゴリズムを開発した。さらに量子相転移点におけるスケーリング則を導いた。年度内の所期の目的が達成されたと考えられる。
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