研究概要 |
本年度の研究により次の大きな点が明らかになった. 従来の合理的投票理論は,直接的には米英の小選挙区制の解明を念頭に置いた議論であるにもかかわらず,実際には大選挙区を想定した仮定の下での解析を行っている.推論と結論の間の多少のギャップがある.この結果2大政党制の場合に2つの政党の政策が一致する理由は説明できるが, 1.何故小選挙区制の下では2大政党制が生まれるか? 2.何故2大政党制の下で2大政党の公約はわずかに離れるか? という理由は説明できなかった. 本研究での小選挙区制を念頭に置いて「目的関数を変更する」という考え方は結果的に従来の枠組みを変える発想の転換になっており,当初の目標であった政策次元が2である場合以前にそれらより遥かに重要な,これら懸案の未解決問題を比較的単純な枠組みのもとでどちらも同時に解決できた.これらは発表準備中であり,報告集には含められる. 当初の予定である2次元の場合についても解析的なアプローチによる解明が成功している.但し,中途より1次元の場合の大きな成功に置き換えたので,数値計算には十分な時間を割けなかった.又,この結果こちらも雑誌投稿は準備中の段階にとどまっている. 更に本研究の発端となった時系列解析に関わる検証でも,いくつもの成果が得られており,これらは発表済み,あるいは印刷が決まっている.
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