セラミックスと金属からなる熱応力緩和型の傾斜機能材料(FGM)は、過酷な使用熱的環境下において熱応力緩和効果を発現するように組成分布設計されてきた。しかし、熱応力は合成後の冷却過程においても発生し、時には製品の割れの原因となる。使用時の熱応力緩和に適した材料組成分布は合成後の冷却時の熱応用力緩和に適巣とは限らない。合成時の冷却過程における熱応力緩和は、組成設計以外の方法で実現させねばならない。 本研究では、SUS304/PSZ FGMの構成材料であるセラミックス(部分安定化ジルコ二ア:PSZ)の相変態による体積膨張を利用して、FGMを構成する2つの材料の線膨張係数のミスマッチに起因する熱応力を緩和させようと考えた。PSZを高温から冷却すると正方晶から単斜晶へマルテンサイト変態を起こし体積膨張を伴う。この変態は、熱応力と温度に依存して進行する無拡散型相変態てある。相変態を有効に利用するには最適な冷却速度を実現させねばならない。そこで任意の不均質性を有する傾斜機能平板の境界温度が任意に時間変化する(任意の冷却過程)場合の非定常温度場の解析解を、菅野らが提案した区分的線形不均質近似法とラプラス変換すに関する畳込みの定理から導出した。PSZの変態カイネティクスを温度と応力の現在の状態量の関数として表しこの変態相の体積分率をもとに変態によるひずみ量を算出した。FGM平板の変態ひずみを含む熱応力式は、菅野の任意の機械特性をもつ不均質平板の熱応力式を拡張して完成させた。使用時の熱応力緩和に適したセラミックリッチ型の組成分布に対して合成後の冷却過程における温度解析と相変態を考慮した熱応力解析を行った結果、FGM平板のセラミックス100%側の引張熱応力は、相変態を考えない場合曲げ強度を大きく越えたが、相変態を利用することにより曲げ強度まで緩和されることがわかった。次に、遺伝的アルゴリズムを併用して使用時の熱応力を最小化する最適組成分布を探索した。探索された材料組成分布は線形分布から少しセラミックプア型に傾いた分布であり、この組成分布に対する使用時の熱応力分布は定常値を除いてセラミックリッチ型の場合の熱応力分布と大差はなかったが、合成後の冷却過程の相変態を考慮した熱応力は冷却速度を制御することにより適当な相変態を起こさせることにより充分曲げ強度以下に緩和させることができた。(この成果は日本機械学会2000年度年次大会講演会、8月14日、講演予定)
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