研究概要 |
本研究グループでは光と磁気光学センサを用いて欠陥の存在を直接的に肉眼で観察しながら,欠陥漏洩磁束の強度分布も計測できる新しい遠隔光探傷システムを開発した。 この開発した新しい光探傷システムは,自動探傷を可能にするいくつかの特徴を有している。すなわち,(1)検出部と光源・光学系での欠陥情報(画像と光量データ)はデータ伝送における電気的なノイズの影響が無視できるためと,磁気光学センサが試験片表面と均一で小さいリフトオフに保たれている以外は,検査技術者の知識・経験を必要としない。(2)探傷に用いる物理的なエネルギーが超音波のように試験片表面から反射するものではなく,磁気光学センサから反射する光なので,試験片との接触状況が探傷性能に与える影響が少ない。本研究では,このような特長を生かすことで新しい光探傷システムの自動計測システムおよび自動探傷のための基本アルゴリズムを開発し計測精度・時間の改善に成功した。また,従来の磁気光学センサを用いた探傷法では困難であった,配管内壁などの曲面を有する構造物の探傷へと本手法を適用するため,幅の狭い磁気光学センサと漏洩磁束の垂直成分を利用する方法,曲面に沿って加工した磁気光学センサと漏洩磁束の平行成分を用いる新しい方法を提案し,炭素鋼製の配管内部に発生した,表面長さ250μmと700μmの微小腐食疲労き裂へと適用することでその有用性を示した。 3次元表面き裂の逆問題解析手法を開発した。本手法はき裂長さに垂直な方向における試験片表面上での漏洩磁束密度の分布を計測し,ダイポールモデルに基づく未知数を含む理論値との誤差を比較することにより未知数を推定する。従来のダイポールモデルを用いた解析手法では,き裂面上における磁化の分布を一様であるとする手法のみであるのに対し,本手法では磁化に分布を与えることで計算精度を向上させることができる。
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