研究概要 |
本研究は,高分子系複合材料のマトリックス,繊維-マトリックス界面および積層界面の特性に支配される時間依存挙動(クリープ依存挙動)を高温条件について実験的に調べ,これに物理的な解釈と合理的な定式化を与えることを目的とする. 平成11年度は,研究実施計画に従い,一方向炭素繊維強化複合材料(T800H/Epoxy)の長時間高温保持による非主軸変形特性の変化(物理時効)ならびに炭素繊維斜交積層板[±θ]_<3s>のクリープに起因する応力リラクセーション挙動をそれぞれ実験によって詳しく調べ,以下の新しい知見を得た. 1 一方向T800H/Epoxyの物理時効による特性変化を定量的に調べるため,繊維配向角θ=0,10,30,45,90°のそれぞれについて,100℃で1,25,50,100h保持した非主軸平滑試験片の高温引張試験(100℃)を行った.この結果,(1)物理時効に起因する材料硬化現象が明瞭に観察された.(2)前年度に有効性を示したSun-Chenの相当応力と相当塑性ひずみのべき乗関係において,係数に時間のべき乗依存性を考慮するだけで非主軸非弾性変形の時効硬化特性を統一的に記述することができることを見出した. 2 一方向T800H/Epoxyの斜交積層板[±θ]_<3s>のクリープ依存挙動を調べるため,プライ配向角θ=0,30,45,60,90°の平滑試験片を用いて100℃における応力リラクセーション試験を行った.この結果,(1)いずれのプライ配向に対しても応力リラクセーション応答が明瞭に現れた.(2)応力リラクセーションは,全ひずみを一定に保持した後,短時間で急速に飽和状態に漸近する傾向を示した.ただし,応力は完全には0まで緩和しない.(3)プライ配向角および一定保持する全ひずみの大きさにかかわらず,応力リラクセーションが開始応力に対してほぼ一定の割合で生じることを見出した.(4)応力リラクセーション速度は,時間と各瞬間の応力のべき乗に比例することを見出した.(5)プライ配向角がθ【greater than or equal】60°の場合,応力があるレベルまでリラクセーションした後,応力が時間とともに徐々に増加するという特異な現象の現れることをはじめて明らかにした.
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