研究概要 |
本研究は,高分子系複合材料のマトリックス,繊維-マトリックス界面および積層界面に支配される時間依存挙動を高温条件について実験的に調べ,これに合理的な定式化を与えるための基礎的な検討を行うことを目的とする.平成12年度は,この研究の最終年度に当たることから,時間依存挙動のモデル化に重点をおいて研究し,以下の成果を得た. 1 一方向T800H/Epoxyの非主軸平滑試験片(繊維配向角θ=0,10,30,45,90°)を用いてl00℃で応力リラクセーション試験を行い,非主軸リラクセーションの飽和レベルについて調べた.この結果,(1)Sun〜Chen形の相当応力と相当塑性ひずみを用いることよって非主軸リラクセーションの飽和レベルを統一的に記述できることを明らかにした.(2)Sun-Chen形の相当応力と相当塑性ひずみを規定する材料定数(界面せん断の影響を表現する定数)a_<66>は,条件に依らず1.0^-1.6の値を取ることが多いことを見出した. 2 一方向T800H/Epoxyの非主軸リラクセーション挙動をGates-Sunモデルを用いて解析した.この結果,(1)成果1に基づいて超過応力の変化を適切に考慮することで,実験結果にほぼ対応する予測結果の得られることを確認した.(2)ひずみ保持開始直後におけるリラクセーション速度の大きさが予測結果と実験結果の違いに大きく影響することを明らかにした. 3 非可逆熱力学に基づく内部変数理論を応用して,Gates-Sunモデルを特殊な場合として含むより一般的な時間・速度依存形構成モデルを定式化した.提案した構成モデルは,完全な多軸形式を有し,広範囲の非線形挙動と損傷挙動を含むいっそうの一般化にも対応できる柔軟性を兼ね備えている.提案した構成モデルが一方向強化複合材料のクリープ/リラクセーション挙動の予測に対して有効に利用できることは,成果2から明らかである. 4 アングルプライ積層板の高温における引張挙動を一方向強化複合材料に対する構成モデルと古典積層理論を用いて解析した.この結果,(1)プライ配向角が大きい場合,この手法が有効であることを確認した.(2)プライ配向角が小さい場合,層間せん断応力の影響が強くなるために平面応力を仮定する古典積層理論では十分な精度の得られないことを明らかにした.(3)成果3と3次元的な均質化法を組み合わせることで,アングルプライ積層板および多方向積層板の時間依存挙動を十分な精度で予測できる可能性が高い.
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