1. 半導体ヘテロエピタキシャル層の表面うねりに対して、弾性異方性を考慮した線形安定性解析を行った。系の自由エネルギーは、表面エネルギーと弾性ひずみエネルギーの和で表されると考え、また、アニールの実験条件に対応して、体積一定の仮定を設けた。Si_<1-x>Ge_x/Si系に対する数値計算の結果から、(1)自由エネルギーの減少の度合いは、<110>方向のうねりより<100>方向のうねりの場合の方が大きく、<100>方向のうねりの方が実現しやすいこと、(2)Si_<0.82>Ge_<0.18>/Si系に対する本理論による臨界波長は444nmであり、実験値440nmと良く一致すること、(3)ミスフィット転位に対する臨界膜厚と表面うねりの絶対安定領域を境界づける膜厚を比較することにより、Ge含有分率が0.5より小さい場合にはミスフィット転位生成が、Ge含有分率が0.5を超える場合には表面うねりの形成が主たるひずみ緩和機構となることが明らかとなった。 2. 半導体ヘテロエピタキシャル層の転位の形成過程の一形態として、層表面のステップあるいはレッジがミスフィットひずみによって崩壊し、そこから転位が核生成するという説が報告されている。本年度はStillinger-Weberポテンシャルを用いた三次元分子動力学シミュレーションによって、Si/Ge系とGe/Si系の表面ステップと表面レッジに対して、この説の妥当性の検討を行った。シミュレーションの結果から、(1)ヘテロエピタキシャル層では、引張りひずみ状態より圧縮ひずみ状態の方が表面再構成を起こしやすいこと、(2)<100>方向のステップおよびレッジよりも層の結晶構造の変化の度合いが大きいこと、(3)一原子層の高さを持つステップで最も結晶構造の変化を起こしやすいのは、圧縮ひずみ状態にある<110>方向のS_Aステップであること、(4)Zimmerman-Gaoの結果とは異なり、転位の形成は見られないことが明らかとなった。
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