研究概要 |
近年「理工系離れ」が指摘され,それが社会的問題となってクローズアップされ,めざましい科学技術の進展の背景で,若者の科学技術に対する興味・関心の低下が懸念されている.このことは理工系分野の学生にも言えることであり,大学の大衆化および入学する学生の多様化に対応した大学における工学教育内容・方法等の思い切った改善が必要であると考えられる.このような背景から,「材料強度」の講義を教科書学習だけの授業から,材料の変形および破壊を実際に見ることのできるような,「発見」や「創造」の場に学生自らが参加できる授業形態を実現するために,講義室等で実験的に材料の巨視的および微視的な変形・破壊現象を観察することが可能な卓上材料強度試験機を開発してきた.本研究では,同試験機を柱とした材料強度試験システムを開発するために,計測機器,微視的・巨視的観察装置の充実およびソフト面の開発を行った.すなわち,材料強度の分かり易い解説および材料強度試験の実・疑似体験を可能にするための周辺機器(計測器,コンピュータ,ビジュアル機器)およびソフト面の強化を行った.また,同システムを用いて4年生の学生および中学校の学生に対して試験的に模擬実験を行ったところ,従来のテキストのみによる講義に比べて材料強度現象を分かり易くかつ興味深く理解する上でかなり有効であることを確認した.本年度(最終年度)においては,本学知能システム工学科2年生を対象とした「実験講義(材料試験)」で本システムを実際に利用した講義を実施し,その学生の反応や教育的効果等について調査および考察を行った.本システムを用いた講義は,材料強度教育方法の改善に対して大きく寄与するものと思われ,開発したシステムを本格的に運用する準備は十分整ったといえる.
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