研究概要 |
本研究では,層間樹脂層を制御してベースラミナとの界面領域まで拡散させ,炭素繊維の阻止によりき裂を高靭化層内にとどめ,層間強度を飛躍的に向上させることを第一の目的とする.さらに,複合材料構造物の長期使用では,疲労,衝撃等の損傷の修理が避けられない.このため,層間高靭化層を熱可塑性樹脂として,再溶着させることにより,修理可能なインテリジェント材料とするとともに,その修復後の信頼性向上を図ることを第二の目的とする.本年度の成果は次のように要約される. (1)層間樹脂層の界面層を制御した積層板のメゾ構造:CF/エポキシ積層板において,層間の樹脂層として,エチレンとメタクリル酸の共重合体の主鎖にZnイオンで中和されたカルボン酸基を付けたアイオノマーを用いた積層板を作製した.電子線マイクロアナライザによりアイオノマーのベースラミナ内の炭素繊維間への分散状況を測定した.成形条件を工夫することにより,高靭性のアイオノマーがベースのCF-/エポキシ層に侵入する形で,ベースCFRPの表層の炭素繊維1〜2本文くらの厚さに,界面層が形成されることを確認した. (2)層間樹脂層の界面層を制御した積層板の破壊力学特性:層間破壊じん性試験において,き裂は層間樹脂層とベースCFRPの界面,あるいは,界面から繊維1本文ベースラミナ内に入ったところを伝ぱした.すなわち,き裂は常にアイオノマーが混合し,高靭化された界面層内を伝ぱした.これに対して,靭性値はモードI,モードIIともベースCFRPと比べ著しく上昇した.また,これまでの材料で見られた,き裂進展ともに靭性値が減少する傾向も認められなかった.
|